人生初の職質を受ける

23:45。
一刻も早くハガキを投函する必要があり、近所のコンビニに出かける。明日の朝一番でもよかったのだが私は基本朝は起きたくない。
距離にして2km。車社会である田舎では移動は近距離でも車を使うのが普通。特にこんな氷点下の夜は。
しかしいいかげん自転車に乗りたい欲求が高まってきたのでマウンテンバイクで走る。寒いものの道路は乾いているので凍結はしていない。
走るには問題ないが、顔、特に耳が冷気に晒されると辛いのでネックウォーマーを目の下まで引き上げ顔を防護。

コンビニ到着。
ハガキをポストに入れた後ついでに買い物。再び自転車にまたがり帰路に着く。ちなみに道路は青森県道15号。両側田んぼの半ば農道。
ト形道路交差点を右に曲がったところでライトが突如消える。自転車を止めスイッチを押すが反応が無い。バッテリーが切れてしまったようだ。

―――――あたりは真っ暗。

田んぼを貫く道路、街灯なんて気の利いたものはない。加えて私は夜目が利かない。無灯火で走るなど怖くてできない。
家まで残り1kmくらいなので仕方なく自転車を押して歩き出す。

・・・それにしても妙だ。
自転車を止めライトをカチカチやってる最中に向こうから車が1台来たのだが、その車、丁字路の停止線よりやや手前で止まったまま動かない。停車にしてはスモールランプにするでもない。私が照らされている格好だ。何なんだ? 左右どこからも車来てねーぞとっとと曲がって行けよライトが眩しいんだよ。
疎ましく思いながら歩き車を通り過ぎたらギアをパーキングに入れる音が。と同時にドアを開ける音もする。


出てきたのは、2人の警官だった。
この車パトカーだったのか。赤色灯ついてなかったしライトで眩惑されてわからなかった。
「さっきコンビニから出てきましたよねー、こんな所で何を?」
これは・・・世に聞く『職務質問』というやつか。話には聞いていたが実際に遭遇したのは初めてだ。
ライトが切れたから自転車を押して歩いていることを伝えると、「あーだからあそこで自転車降りたんだ。律儀だね〜」と。無灯火で自転車こいだらあんたら捕まえるでしょうが。
・・・ん? 『コンビニから出てきた』? 『あそこで』?
ということはこの警官s、私をコンビニを出た時からマークしていたということか。しかも一本向こうの道路から先回りして。ただの職務質問と思っていたがこれは穏やかではなさそうだ。
名前と住所を聞かれる。面倒なので常に財布に入れて携帯している免許証を提示。
すると警官の1人が免許を持ってパトカーに戻りナニゴトかをやる。その間にもう1人の警官と一問一答。
「車にはあまり乗らないんですか?」「運動不足なのでなるだけ自転車で動いてるんですよ」
「いつもこんな時間に外出を?」「今日は遅番だったので遅くに帰ってきたので」
「病院勤め?」「いや介護施設っす」「夜勤もやってるの?」「はい」「へー何時まで?」「9時半から7時半ですね」「うちは夜の8時から朝8時までなんだよね〜」

そうこうしているうちにもう1人の警官が戻って免許証を返す。身の潔白は証明されたようだ。
どうやらこの近辺でゴミとか物を荒らすイタズラが頻発しているらしい。なるほどねだから深夜に出歩いている人間には声をかけているというわけか。
最後に自転車乗りという事で防犯登録を確認されて晴れて釈放。所要時間10分くらいだろうか。ちなみに最後にだが警官側も自らの名を明かした。


やれやれ、とんだトラブルだ。やましいことは一切無いがやはり気分のいいものではない。
こんな超がつく田舎の村で、わざわざ氷点下の夜にネックウォーマーを目の下まで引き上げて顔を隠しマウンテンバイクで走る。・・・警官からみれば怪しさMAXということか。
深夜の自転車はしばらく控えたほうがよさそうだ。

・・・そういや俺の8万円を盗んだ腐れ外道はまだ見つからんのスか!?*1