ふきみそと久保田百寿

家に帰り台所を覗くと、フライパンになにやら黒っぽいペースト状のものがある。
舐めるとしょっぱい。そして苦い。刻まれた茎か葉が混ざっているようだ。
これはまさか・・・酒のほそ道なんかでよく出てくる『ふきのとう味噌』というやつか。


ふきのとう味噌―私の地域では『ふきみそ』と呼んでいる―といえば春にしか味わえない季節モノ。
この時期になると前の家のまわりにふきのとうがいっぱい生えてくるので、うちの母親、しょっちゅう摘んできては天ぷらやふきみそに仕立てていた。
しかし実は、私自身は苦味はあまり得意ではなく、ふきのとう料理は昔から好きではなかった。というわけでふきみそもふきのとうが入っているというだけで避けていたので食ったことがない。
ところが今なめたふきみそ、あまり苦味を感じない。かすかに苦い程度でしかもえもいわれぬ風味すら感じる。これが、これが巷で言う「春の味わい」というものなのか?


ともあれここは日本酒と合わせてみる。
いま冷蔵庫に備蓄してあるのは『朝日鷹』と『久保田 百寿』。
酒のほそ道にならい、ふきみそを箸の先にチビッとだけ付けて舐め、しょっぱさと苦味―春の味わい―が口じゅうに広がったところで酒をキュッとやる。
まずは朝日鷹。 ・・・うーーーん、ふきみその苦味で酒の持つ甘さが増幅されたように感じる。まるで砂糖水になったみたいだ。
次いで久保田。 ・・・うん、ふきみその苦味としょっぱみをスッと洗い流して酒の味が広がる。で、またふきみそが舐めたくなってしまう。そして舐めたらまた酒を・・・


なんてことだ。これでは際限なく酒が飲めてしまうσ(^^*)
どうやらふきみそはスッキリ淡麗な、辛口の日本酒が合うようだ。
それにしても昔は苦手だったふきのとうがこうも美味しく味わえるとは・・・、これは、苦味に対する耐性がついたという事なのかはたまた酒の魔力か、それとも単に味覚の劣化か?